時計豆知識 あいうえお

 

アール(R/retard)
フランス語retard「遅れ」の頭文字からとった、時計の動きの遅れを示す記号。 進みを表す記号である‘A”(フランス語avance「進み」の頭文字)とともにテンプ受けなどに記入する

RA(アール・エー)
R(retard)は遅延を、A(advance)は進を表す。緩急針のあるテンプにはこのように略語で書かれている。

アールデコ(art de’co)
1910年から1935年ごろに流行した、幾何学的デザイン様式で、キュービズムの影響を受けている。腕時計の場合、1920年代に多く作られ、階段状のケースや幾何学模様を採り入れた文字板などの特徴をもっている。特にこの時代のアメリカ時計に多くみられる。

IC(アイ・シーIntegrated Circuit )
集積回路のこと。ICとはIntegrated「集積された」Circuit「回路」の略で、 トランジスター,抵抗、コンデンサーなどの単純な働きをする回路(素子)を ごく小さくひとつにまとめたもの。水晶時計用のICの大きさは3~5ミリ角、 厚さ約0.3ミリぐらいしかない。材質は半導体であるシリコンだ。通常アナログ時計用のICには素子が300個、アナログとデジタルの複合時計の場合には15,000個入っている。

アキュトロン(Accutron)
アメリカのブローバ社が、ライバルのハミルトン社に対抗するため1960年代前半に開発した電子時計。電子時計といっても現在の水晶振動子利用したクオーツとは構造が違い、水銀電池で音叉を振動させて動かすという機構だった。この機構は、スイスのヌーシャッテル時計研究所の物理学者マックス・ヘーツテルが考案した発振装置に音波を使った時計が基になっている。一度時間を合わせてしまえば、絶対に狂うことはないという意味で、サイドにあるべきはずのリュ-ズが裏ブタに隠されているのもこの特徴のひとつだ。発表された当時、このゼンマイガないアキュトロンは時計史を覆す大発明として迎えられたがクオーツの登場とともに姿を消すことになる(音叉時計の項参照)。

アジャステッド(Adjusted)
腕時計のムーブメントに表示してあり、等時性、温度や姿勢による誤差を調整してあることを示している。

アズモ・メーター(Asthmometer)
ドクターズ・ウォッチのひとつで、ダイアルに1分間の呼吸数を表示するスケールがついている。患者の1回目の呼吸でスタートさせ、15回目でストップさせると1分間の呼吸数を表示する。

アップ・アンド・ダウン・インジケーター(Up Down Indicator)
ゼンマイの巻き上げ状態を表示して持続時間を知らせる表示装置。一般には> 扇上のダイアルになっている。希少なため人気がある。最近ではルイ・エラール社が発売し話題となった。残量計ともいう。

穴石(あないし hole stoneホール・ストーン)
テンプや歯車の真軸のホゾ(軸の先端の丸まった部分)を支持する石で、地板(部品を取りつける基盤)や受け(部品を取りつける地板以外の板)にはめ込まれる。一般にはホゾの先端を受ける受け石とともに用いられるが、形状によっては単独で用いられるものもある。

アナデジ(analogue-digital)
アナログ表示とデジタル表示を組み合わせた時計の通称。デジアナとも呼ぶ。

アナログ(analogue)
アナログとは英語で「連続量を表す」という意味。時計の場合は針で時間を表示するものを指す。時間を連続するものとして表示するので、一目で現在の時刻と経過時間や残り時間などがわかる。

アナログ水晶時計(あなろぐすいしょうどけいanalogue quartz watch)
文字どおりアナログ式の水晶時計。秒針が滑らかに動くスイープ式と、等間隔に秒を刻んでゆくステップ式のものがある。現在でも主流である1秒ずつのステップ運針式のアナログ水晶時計の構造は以下のとおり。まず電池から流れる電流が、水晶(水晶振動子)とICにより、規則正しいパルス状の電流になる。次にこのパルス電流がステップ・モーター(ステップ・モーターの項参照)へと流れ、モーターが回転することにより、針を動かす歯車が動く。

油(あぶら oilオイル)
部品の接着面を潤滑し運動を円滑かつ損失を少なくする役目を果たす。 適当な粘着性と流動性があり、揮発性がないこと温度変化に強いこと腐食性のないこと、科学的な酸化変質がないことが、時計に適した油の特性といえる。ゼンマイ巻き上げ装置はグリース系が、金属と金属の摩擦面には二硫化モリプデンが含まれたオイル(グラファイト・オイル)が使用される。金属と石の摩擦面、そして脱進機などには魚類作られるオイルが使用されることが多い。また、どのような部品にも用いることができる万能油も発売されている。

アメリカ金(American Goldアメリカン・ゴールド)
金の合金で、銅の含有量が多いため赤味がかった色をしている。その色から赤色金(red gold)とも呼ばれる。

アラビア数字(Arabic indexアラビック・インデックス)
1,2,3・・・・と表していく数字体、つまり算数字のこと。文字板の全個所または数個所にレイアウトすることによって、スポーティでユニークな印象になる。

アワー・レコーデイング(hour-recording)
ミニッツ・レコーデイングに加えて、12時間が搭載されたクロノグラフ。30分ごとのものと1時間ごとのものがある。

アンクル(ancre)
テンプとガンギ車とを噛み合わせる振動片。ちょうど錨のようなテコとなっており、アームのような2つの端にツメ石を用いる。レバー(Lever)ともいう。

石(いし jewelジュエル)
赤系統はルビー、青系統はサファイヤ。金属の摩擦を防ぐために、テンプ、アングル、ガンギ車などの受け石や穴石に用いられる。多いほうが望ましいとされるが、手巻きで17石、自動巻きで21石あれば十分である。

石入り(いしいり jewelledジュエルド)
宝石で作った受石や穴石がついている時計を指し、使用している石の数により18石時計、21石時計などと呼ぶ。ちなみに15石以上の宝石を用いたものは‘多石式(fullyjewelled)”とも呼ばれる。以前はルビーやサファイアなどが使われていたが、現在では人工宝石がそのほとんどを占めている。

ISO規格(イソ、アイ・エス・オーきかくInternational Organization for Standardization 国際標準化機構)
国際基準化機構が決定した工業製品の規格。ダイバーズ・ウォッチに関する条文も含まれており、一般時計とダイバーズ・ウオッチを区分する目安としてしばしば引き合いに出される。

・少なくとも100mの水中浸漬に耐えるよう設計されている。
・ベゼルリングのとうなタイム・プリセッテイング機能も備える。
・暗闇においても25cmの距離から時刻を見ることができる。
・耐磁性を備えている。
・耐衝性を備えている。
・耐塩性を備えている。
・水中加圧での信頼性(表示深度の125%の圧力で2時間)
・水中作動試験(0.3mで操作)。
・耐熱衝撃試験(0.3mで摂氏40度を10分、5度を10分、40度を10分)。
・リュウズ、ベルトの耐外力性。
・耐ヘリウム雰囲気性。

一番車(いちばんぐるま mainwheelメイン・ホイール)
ムーブメントの輪列(たがいにかみ合って作動する一連の歯車やピニオンの一部)の一番初めにトルクがかかる歯車。

いぶし(oxidize オキシダイズ)
いぶし金メッキ、いぶし銀メッキはアンティーク調の外観を作るときにたびたび用いられる。もともとは長い年月かけて変化した色調だが、メッキと加工の技術ではじめから作ってしまう。方法は、金メッキもしくは銀メッキをつけた上に黒ニッケル・メッキなど黒色のメッキをつけ研磨して上面の黒色メッキをはがす。すると凸部に残ったがいぶしのようにみえる。

インク(ink)
文字板上の印刷には、コルク用などのインクを使い分ける。インクにはもともとのつやがあるものだが、半つや消し、つや消しにするには、つや消し剤を加減して混ぜる。透明インクも文字板のデザインをするときに有効。

ウォーター・プルーフ(water proof)
防水のこと。水分や湿分がケース内部に侵入することを防ぐために、各社さまざまな機構を開発している。代表的なものは、裏蓋をねじ込み式や食い込み式に挿入するもの。またガラスをはめ込む枠があるものは、その枠をプラスチックのパッキングによって気密化してある。

ウオッチ(watch)
腕時計や懐中時計などの、携帯できる小型の時計を指す。掛け時計など大型のものは、クロック(clock)と呼ぶ。

受石(うけいし end stoneエンド・ストーン)
ホゾ(軸の先端の丸まった部分)の先端部を受ける石で、穴石(穴石の項参照)の外側に取り付けられる。

腕時計歩度測定器(うでどけいほどそくていき wrist watch tester リスト・ウオッチ・テスター)
腕時計の精度を調べる機械。

エヴィエーション・ウオッチ(aviation watch)
コンパス機能や飛行速度計、100分割サークル、飛行方向ガイドなど、飛行時に必要なデータが文字板に収められた時計。ブライトリングのナビタイマーは、世界で唯一のAOPA(航空機オーナー・パイロット協会)の公認時計であり、フランス空軍やエジプト空軍の標準装備時計に指定されている。

液晶(えきしょう liquid crystalリキッド・クリスタル)
液状結晶の略。オーストリアの植物学者亜ライニッツアが1888年に発見したとされている。液晶とは液体と固体の中間の物質で、しかも結晶の性質を持つ。またある温度範囲以下では固体になり、それ以下では気体になるという性質をももっている。時計の標示板、つまり液晶板に使われる液晶は石油精製時にとれる副産物を合成して作られ、その温度範囲は通常、マイナス10度からプラス60度までである。

液晶時計(えきしょうどけい liquid crystal watch)
液晶版に数字を表示して時刻を示す時計。液晶板とは2枚のガラス板の間に液晶物質を封入したもの。そのガラスの内側には透明の電極でできた数字のセグメント(一部)などが印刷されており、ICの出力端子に連結されている。液晶には電圧が通る部分と通らない部分に色の差が出るという特性があるので、表示したい透明電極にのみICから電圧をかけてやれば、その部分が黒く見えるわけだ。ちなみに液晶板にはエフ・イー型とディー・エス型がある。(それぞれの項を参照のこと)

エキゾチック・ダイアル(exotic dial)
ロレックス・オイスター・コスモグラフ・デイトナの文字板デザインの俗称で、1960年代から70年代の初めにかけて作られたコスモグラフ・デイトナの一部に見られる。スモールセコンドの秒表示が15-30-45-60となり、12時間計と30分計の表示は数字とバーインデックスの組み合わせで、バアーインデックスの先端に四角が付いているのが特徴。「ポール・ニュ-マン・タイプ」とも呼ばれる。アメリカの映画俳優ポール・ニューマンが映画の中で使っていたことからつけられた名称といわれるが、オークション・ハウスのアンティクオラムのカタログでは1990年からこの名称が使われている(ロレックス・オイスター・コスモグラフの項参照)

干支(えと)
文字板のこと。日本ではその昔和時計の文字板の時刻を表すのに十二支を用いていたため、こう呼ばれるようになった。古くからの呼び方がいまだに残っている。

エナメル(enamel)
着色皮膜で、焼き付け加工がなされる。光沢があるため、文字板や金属面の装飾などに用いられる。

FE型液晶板(エフ・イーがたえきしょうばん)
FEはField Effect Mode「電界効果型」の略。最も一般的な液晶型の形態である。液晶板は上から偏光板、上ガラス、液晶物質、下ガラス、偏光板、反射版の5重構造になっており、透明電極と電圧がかかれば、上から見るとそこだけ黒く浮かび上がって見える作りになっている。

エボーシュ(ebauche)
未完成の時計機械。スイスにはエボーシュ専門のメーカー(メカ、クオーツのどちらもある)もいくつかあり、スイスではETAが有名。時計メーカーはこうした会社から機械を仕入れ、ゼンマイを付け、輪列を完成し、石や脱進機、文字板、針を取り付け完成するのである。

LED(エル・イー・ディlight emitting diode発光ダイオード)
LEDはLight「光」、Emitting「放射する」、Diode「ダイオード」の頭文字をとったものだ。鉱物の一種で電気を加えると発光する性質があるため、主に1970年代前半にデジタル時計の時刻表示に用いられた。しかし、消費電力が大きく、またその熱を発する性質が故障原因ともなったため、その後すぐに液晶板にとって変わられる。

LSI(エル・エス・アイ large scale integrated circuit大規模集積回路)
大型のICを指す。ちなみにLSIはLarge「大きな」、Scale「規模」、Integraatedcircuit「集積回路」の略。

LC(エル・シー Liquid crystal液晶)
Liquid「液体」、Crystal「結晶」の略である。尚LCDは液晶表示のことで、DはDisplay「表示」を意味する。液晶の項参照。

エンボス文字板(embossed dial)
かつては植字などを植えていた凸部や削って作った凹部を、文字全体をプレスかこうして、凹凸をつける作り方。植字をひとつずつ植えていく手間が省けるうえ、1デザインに一つのプレスで間に合うので、同じデザインを安価に大量に作る際には適当。しかしながら凸部の高さや下地の目付け仕上げには技術的な限界がある。台湾の文字板メーカーが開発・発展させた。

オイスター(Oyster)
ロレックスが11926年に発表した、世界初の完全防水ケースをもつモデルに冠せられる名称。ケースは金属隗をくりぬき、それを削って作られる。またリュウズはねじ込み式のツインロック・システムだ。オイスターが一躍有名になったのは発売年の翌年である1927年のこと。イギリス人女性のメルセデス・グライツガオイスターをつけてドーバー海峡を泳いで横断。そして横断後も彼女のオイスターは動き続けていたのだ。これをロレックスは広告に利用し、オイスターの名を広めた。また、第二次世界大戦中に海に沈んだアメリカの潜水艦の中から、波に揺られて動き続けていたロレックス・オイスターが発見されたのも有名な話。オイスター・ケースの基本構造は現在まで変えられていない。そのことが性能の高さを物語っていよう。

オイスター・コスモグラアフ(Oyster cosmograph)
ロレックスが1961年から1987年末までに発売したクロノグラフで、通称「デイトナ」で知られる。文字板の12時間記録計の上に‘デイトナ”の文字が入ったものもあったため、「オイスター・コスモグラフ・デイトナ」とも呼ばれる。ちなみにこのデイトナとはアメリカはフロリダ州にあるサーキット、デイトナ・スピードウエイから取ったもの。ケースは50m防水のオイスター・ケース。ムーブメントは手巻き式で、数回修正や変更を受けている。なお1960年代から1970年代までに生産されたスモールセコンドの表示が15-30-45-60となっているものは、‘エキゾチック・ダイアル”‘ポール・ニューマン・タイプ”とも呼ばれ、コレクター市場で人気が高い。

オイスター・デイデイト(Oyster daydate)
ロレックスが1956年に開発した曜日と日付表示機構が付いたもの。ケースはオイスター。SUNDAY,MONDAYと、曜日のスペルを省略することなく表示していく。ちなみに曜日は20カ国語以上で用意されており、以前は日本語のものも作られていた。

オイスター・デイト(Oyster date)
日付表示が文字板に付いているロレックスで、ケースはオイスター。表示は0時ちょうどに自動的に変わるようになっている。機能的にはデイトジャストとまったく同じだが、デイトジャストのほうが表示窓がやや大きめである。発売年は1952年ころである(オイスター・デイトジャストの項参照)

オイスター・デイト・クロノタイム(Oyster date chronotime)
1930年代にロレックス社のデッフュージョン・ブランドとして創立したチュードル社が発表したクロノグラフ。オイスターケース、スクリューロック式のプッシュボタン、ベゼルのタキメーター表示など、ロレックス社の「オイスター・パーペチュアル・コスモグラフ・デイトナ」と同様の機能を持つ。ムーブメントはレマニア社製。

オイスター・デイトジャスト(Oyster datejust)
ロレックスが世界で初めて日付表示機構を開発したのは1945年。それは文字板の小窓に自動的に日付を表示するもので、‘デイトジャスト”と名付けられた。オイスター・デイトジャストは、この機構が付いたオイスター・ケースの時計に冠せられる名称。

オー・リング(O-ring)
円形のパッキンのことで主に防水時計、ダイバーズ・ウオッチに用いられる。特殊な合成ゴムでできており、その弾力性で裏蓋と胴、ガラスと胴、リュウズトパイプを密着させる。

オートマチック(automatic)
機械がある要因を受けて自動的に作動すること。時計では自動巻き式のものをこう呼ぶ(自動巻き腕時計の項参照)。

オープニング径(おーぷにんぐけいopening オープニング)
腕時計を上面から見て、ケースの内側で見える部分の文字板の大きさ。

音叉時計(おんさとけい tuning fork watchチューニング・フォーク・ウオッチ)
ピアノの調律で使用される音叉を動力源とする電子式時計の総称。電子回路によって正確な音叉発振器を作り、そのサイクルを機械に取り出してムーブメントを作動させるという仕組み。水晶式のクオーツ・ムーブメント登場以前は、電子時計の最先端であった。ブローバ社が1960年に発表した「アキュトロン」が代表モデル。日本ではシチズンが商品化した。

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